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なぜ、鈴木ケンジはKindle出版プロデューサーの育成を続けているのか

執筆:鈴木ケンジ|株式会社ゼロワン出版 代表取締役

「自分には、本に書けることなんてない」。そう思っている人に、自分の経験を本にする喜びを知ってほしい。その出版を一緒に喜べる仲間を増やしたくて、僕はKindle出版プロデューサーを育てています。

僕は2019年から、Kindle出版プロデューサーの育成に取り組んできました。

Kindle出版プロデューサーは、著者の知識や経験、想いを整理し、企画から制作、出版後の活用までを支える仕事です。僕はその役割を、著者の隣で一冊の本を形にしていく「伴走者」だと考えています。

なぜ、この仕事を続けているのか。僕自身の出版と、ある著者の方からいただいた言葉からお話しします。

僕自身も、「自分には何もない」と思っていた

今でこそ、出版を支援したり、プロデューサーを育てたりする立場にいますが、最初から自分の強みに自信があったわけではありません。

周りで活躍している起業家を見ては、自分には人に誇れるような経験も、特別なスキルもないと感じていました。マーケティングの講座で自分の強みを聞かれて、答えられなかったこともあります。

だから、「本に書けることなんてありません」と言う人の気持ちは、僕にもわかります。

自分の経験を振り返っても、そこにどんな価値があるのか見えない。その状態から一歩踏み出すのは、簡単なことではありません。

初めてKindle出版に挑戦したのは2017年。最初の本には、今読み返すと直したいところがたくさんあります。そんな僕が、周囲から「出版を手伝ってほしい」と言われるのですから、初めは戸惑うばかりでした。

それでも本を出すと、会ったことのない人にも僕の考えや人柄を知ってもらえるんですね。本を読んで想いに共感し、講座に申し込んでくださった方もいます。

自分では価値に気づけなかった経験が、誰かにとっては知りたいことになる。

そのことを、僕自身が出版を通じて実感してきました。

印税以上に嬉しかったのは、自分の言葉が届いたこと

自分の本を誰かが買ってくれた。読んで、共感してくれた。挑戦するきっかけにしてくれた。

そうした反応をいただいたとき、売上の数字だけでは表せない喜びがありました。自分が経験してきたことにも、人の役に立てる部分があったのだと思えたからです。

書きながら、自分は何を大切にしてきたのか、なぜあの出来事が心に残っているのかと、立ち止まることもあります。

読者に伝えるために書いているのに、僕自身が教えられることもあるんです。

「夢が叶った!」という言葉が、出版を見る目を変えた

ある女性起業家のKindle出版をお手伝いしたときのことです。出版後、その方はとても喜んで、僕にこう言ってくれました。

「夢が叶った!」

僕にとって、忘れられないひと言です。

それまでの僕は、Kindle出版を、集客やビジネスに役立つマーケティングの手段として考えていました。でも、その方にとって、自分の本を出すことは長年の夢だったのです。

同じ「出版」でも、そこに込められている意味は、一人ひとり違う。

経験を残したい人もいれば、大切な人に伝えたいことがある人もいる。自分の専門知識を、必要としている人に届けたい人もいます。

その想いを聞き、一冊の本になるまで一緒に進む。出版できたとき、その喜びを著者と分かち合う。

こうした瞬間を支えられる人を、もっと増やしたい。

「夢が叶った」という言葉は、僕が出版プロデューサーを育てたいと考える大きなきっかけになりました。

自伝を書いて、貧しかった過去の受け止め方が変わった

書くことの価値を考えるとき、僕自身の忘れられない経験があります。

子どもの頃、うちは貧しく、家も古く傷んでいました。恥ずかしくて、彼女ができても家に呼べない。本当の理由を言えず、「親が面倒だから」とごまかしたこともあります。

そんな過去を、自伝『器用富豪』を書く中で振り返りました。

そして気づいたのが、「貧乏でも、幸せだった」ということです。

貧しかったという事実が変わったわけではありません。ただ、その時代を振り返る僕自身の見方が変わりました。それまで人に言えなかった過去を、自分の人生の一部として表に出せるようになったのです。

自分のことを書いているつもりが、自分のことを知り直していた。

僕にとって、自伝を書くのはそんな経験だったんです。

「Kindleセラピー」は、書くことで自分と向き合う体験を表す言葉

僕や講座の受講生は、書きながら自分の気持ちに気づいたり、過去を違う目で見られるようになったりする体験を「Kindleセラピー」と呼んでいます。執筆を通じて自分を知る、という意味で使っている言葉です。

受講生の中には、自伝を書くことでお母さんとの過去の出来事を捉え直し、再び連絡を取るきっかけになったという方もいました。

僕が大切にしたいのは、著者本人が、自分の言葉で経験を振り返れることです。

どこまで書くか、何を人に伝えるかも、その人自身の気持ちを大切にしながら決めていく。

何を書くかをこちらで決めてしまわず、本人の言葉になるまで待つ。その時間も、僕は大事にしたいんです。

自分が悩んできた経験が、読者の一歩を支えることがある

出版した本には、さまざまな反応が届きます。僕の自伝にも、期待していた内容と違ったという厳しい感想がありました。

一方で、自分らしいやり方でいいのだと思えた、半生を振り返るきっかけになった、仕事に込めている想いがわかった、という感想もあります。

自分が悩んだこと、失敗したこと、迷いながら試したこと。そうした経験も、同じような状況にいる人が考える材料になります。

僕が出版を勧めるときに大切にしているのは、「過去の自分に、今なら何を伝えたいか」という視点です。

あのとき、知っていたら助かったこと。遠回りして、ようやくわかったこと。誰かに言ってほしかった言葉。

そこから考えると、伝える相手と内容が見えてきます。

だから、出版を支援するときは、その人の経験が誰の役に立つのかを一緒に探します。

本人には当たり前でも、同じことで悩んでいる人なら知りたい話かもしれない。だから、すぐに「書くことがない」と決めないでほしいんです。

なぜ、自分だけで出版を支援せず、プロデューサーを育てるのか

僕が育成に取り組むのは、著者の想いを受け止められる人を増やし、出版を支えられる範囲を広げたいからです。

話を聞き、原稿を読み、一冊が完成するまで関わるには時間がかかります。僕一人では、お手伝いできる人数に限りがあるんです。

でも、出版を支えられる仲間が増えれば、僕が直接お会いできない著者もお手伝いできる。

しかも、仲間には僕とは違う仕事や人生の経験があります。

店舗で働いてきた人だから聞ける話、子育てを経験した人だから気づけること、ある分野を長く学んできた人だから整理できる内容があるはずです。

仲間それぞれの経験が、異なる著者を支える力になる。

そこに、育成を続ける意味を感じています。

著者にも、読者にも、出版を支える人にも、得られるものがあってほしい。その中身は、それぞれ違います。

関わる人 出版を通じて届けたい価値
著者 経験や想いを整理し、自分の言葉で伝える機会
読者 自分の悩みを考え直したり、一歩踏み出したりするための知識や視点
出版プロデューサー 自分の経験や聴く力を、誰かの出版を支える仕事に活かす機会

著者として出版を経験した人が、その経験を活かして次の著者を支える。自分が悩んだことや、助けられたことを、今度は支援に活かしていく。

僕は、そうしたつながりを仲間と広げていきたいのです。

想いを届ける仕事を、続けられる仕事にしたい

誰かの役に立てる喜びと、仕事としての収入。その両方を大切にしたいと、僕は考えています。

著者の出版に責任を持つには、学び続ける時間も、制作に向き合う時間も必要です。きちんと報酬を受け取り、無理なく続けられる仕事にしてほしい。そうでなければ、次の著者をお手伝いするのも難しくなってしまいます。

だから講座では、まず自分で出版し、次に人の出版を手伝い、それを仕事にするところまで学んでもらいます。

著者が出版をビジネスに活かしたい場合には、その目的も大切にします。僕自身も、本を通じて人柄や考え方を知ってもらい、講座への関心につながった経験があります。

本で専門性や想いを伝え、その後の発信や対話で信頼を育てていく。

出版後まで考えるのは、著者が自分の強みを活かして活動を続けていくことを支えたいからです。

育てたいのは、著者の話を聴き、最後まで伴走できる人

僕は、Kindle出版プロデュースを「お客様の中にある宝探し」だと考えています。

著者自身が気づいていない経験の価値や、まだ言葉になっていない想いを、対話の中で見つけていく。そのために大切なのが、相手に興味を持って話を聴くことです。

自分の価値観で結論を急がず、その人は何を感じ、どう考えたのかを理解しようとする。意見が違っても、その人がなぜそう思うのかは聞けるはずです。

そのうえで、誰に届ける本なのかを整理し、内容を組み立て、事実や表現を確認し、完成までの作業を進めます。

著者への想いを、具体的な支援に変えられる人を育てたいのです。

AIを使う場合も、著者が本当に伝えたかったことなのか、事実に間違いはないか、最後は自分で確かめます。

その人の話をきちんと聴き、その人らしい一冊が読者に届くまで支える。

僕が伝え続けたいのは、そういう出版プロデューサーのあり方です。

一冊の本が生む可能性を、仲間と届け続けたい

著者からいただいた「夢が叶った」という言葉。自分の過去を振り返り、貧しくても幸せだったと気づけた経験。本を読んで、自分らしく進もうと思えたと伝えてくれた読者。

僕が育成を続ける理由は、そうした一つひとつの経験の中にあります。

本を書くことで、自分が大切にしてきたことに気づく。その経験を言葉にすることで、読者に新しい視点を届ける。出版を支えた人にも、自分の仕事が誰かの役に立ったという実感が残る。

著者と一緒に悩み、完成した一冊を一緒に喜ぶ。そんな仕事をする仲間が、もっと増えてほしいんです。

自分の経験に価値を感じ、その価値を誰かに届けられる人を増やしたい。そんな著者の隣で、出版を支えられる人を育てたい。

だから僕は、Kindle出版プロデューサーの育成を続けています。


この記事の著者

鈴木ケンジ|株式会社ゼロワン出版 代表取締役

2019年からKindle出版プロデューサーの育成に取り組む。ゼロワン出版の公表によると、受講生が関わった出版は1,061冊以上(2026年8月時点)。本とウェブ、マーケティングを組み合わせ、著者の経験や専門知識を出版と事業に活かす支援を行っている。

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